さて、「働かないアリに意義がある」ですが、アリや蜜蜂など真社会性生物と呼ぶ群れをつくる昆虫の特異点について、時に人の社会になぞらえながら書かれている本です。遺伝子の競争や進化論をめぐる論争など色々と面白いことが述べられているのですが、特に興味深いのは、やはり表題になった「働かないアリ」の存在意義です。話は逸れますが、悲しかったのはオスアリの存在価値と行く末。涙なくしては読めません。
話を戻して「働かないアリ」ですが、機能はバッファだそうです。働かないアリと働くアリに能力的な差は少なく、また各アリは専門特化していない凡人で年齢と共に仕事が変わっていくそうです。また規則に従わないアリもいるらしい。同じ行動をとらないために偶然に餌へのショートカットを見つけたりします。バッファのコントロールはどうしているのかと言うと、管理者がいるのではなく閾値とよぶ反応する限界値で自然に動員されるそうです。作者は、片付けたくなる衝動が起きるゴミの量は人それぞれ異なることに例えていました。
これは企業のオペレーションシステム戦略モデルになるのでは。月によって大きく業務量が変化する業種業態は多い。このような企業ではパートアルバイトで補充したりするのですが、企業によっては変化に規則性がなく、また標準化しにくい業務だったりしてパートアルバイトでは補完出来ない場合もあります。働かないアリ戦略をここに適用してみるのはどうでしょう。人事異動を駆使して各業務組織の30%ぐらいは常に流動させ全ての業務に経験をもつ凡人を多数作りだします。各業務はコアメンバーがいて、この人は人事異動の対象とはならず、その業務を実業ではやりません。コアメンバーの役割は常に会議にでて会社の状況をつかむことであり、他のコアメンバーと連日酒を飲みコミュニケーションを深めること、言わば指揮命令系統を超えたオペレーション組織内の裏の連携網を作ることです。出来上がった凡人たち、
おそらくコストが安い集団を多めに各組織に配置します。効率は落ちますが数で補う戦略です。基本、残業が発生しない程度まで潤沢に人を配置します。そして閾値は残業タイムです。残業が発生しそうな所に裏組織を通じて、応援が自然にはいるように柔軟な人員配置作戦を実行するのです。
どうでしょうか? わざと人を余らせ一見非効率に見えて実は低コストな真社会生物を真似た戦略は。結局、残業が一番たかいですからねえ。