2012年8月26日日曜日

構造が違うよ

ヴェリタス 2012.8.5 記事「英国 EU離脱論が消えないワケ」を読んだ。記事はオリンピック絡みの無理やり感があったのですが、いろいろと気づかされます。

記事要約 「英国 EU離脱論が消えないワケ」ヴェリタス 2012.8.5

EUに加盟しているが、大陸欧州とは独自路線をいく英国。「栄光ある孤立」を実現している根拠を5つ示している。
  1. 大英帝国の名残。プライドが孤立を生む。
  2. EU参加の条件として、ユーロ参加例外など様々な例外(オプトアウト)を獲得している。
  3. 1992年のボンド危機(ボンド暴落)で、世界通貨との連動が外れ、孤立した通貨となった。独自な通貨施策が可能となる。
  4. 英国の成長戦略の核である、金融街シティー。これを守ることが国家施策の最優先事項。
  5. 財政施策、金融施策はEU施策に縛られない迅速かつ独自な路線を実施でき、成功している。

日本と違う

記事のグラフ「英国のGDP産業別構成比」が面白い。いや知らなかった。英国のGDPの三分の一は、金融業により生み出されているとは。製造業は、全く出てこない。日本では、たしか製造業が25%程度で、一番だったと記憶しています。 これでは、日本と英国では政府の経済施策が全く異なってもおかしくない。いや、違うべきだ。マスコミの関心も全く異なるだろう。英国エコノミストと日本経済新聞では、「なんかセンスも論調も違うな、エコノミストは恰好良いな」と漠然と思っていましたが、多分この経済構造のせいですね。汗水垂らし製造ラインで働くイメージを持つ日本のマスコミの経済記事が、プロレタリアっぽい論調になってしまうのは当然ですね。そして、口先三寸の分析で金融マーケットを動かすスーツ姿のマスコミ記事がクールに見えてしまうのですね。(この当たり冗談ですよ)
当然ですが、経済の構造の違いは、必要とする財政政策、金融政策の違いに現れるはずです。他国が成功したからといって、自国で成功するわけがない。超国家による政策協調は、部分最適を生まないのです。最近話題の本 ノーベル賞経済学者ポール・グルーグマン著「さっさと不況を終わらせろ」の指摘が、アメリカには通用しても日本に通用しない。当たり前の理屈を踏まえた、地に足がついた議論が面にでない気がします。

個人も構造が違うよね

「xxxすれば儲かる」見たいな成功のための方法論みたいな本が売れています。「○○が教える幸せの法則」とかも同類。人も、それぞれ(精神や背景、能力、資産など)構造が違うんだし、その本の通りにして成功することは絶対にないでしょう。そのような本は、選びうる施策の一つです。選択出来る可能性のある施策案をたくさん知っておくことは良いことだとは思いますが、無理な真似は失敗しますな。まずは、構造を知ることから。

2012年8月4日土曜日

貴船考 タカオカミ考


貴船神社に行きました。目的は撮影旅行。だけど出来は散々。iPhoneの写真のほうが随分とマシ。哀しくなるので、写真の話は終了。いつか、リベンジを果たします。

京都バスで貴船口に到着し、徒歩で貴船神社に向かいます。歩道が整備されていないので、車道の脇を進むのが興ざめ。しかし、さすがは水の神の下、鴨川の源流が途中に小さな滝をなしながら、涼しげに流れている。気持ち良さそう。車道じゃなくて川辺を歩いて登りたかった。

貴船神社の由来
30分ほど登ると、貴船神社本宮にたどりつきます。祭神は高オカミ神(たかおかみのかみ)。水神であり、その姿は龍、オカミの字は雨冠に口三つに、龍と書きます。暴走族ご用達の漢字ですね。
さらに登ると、結社(ゆいのやしろ)があります。祭神は磐長姫(いわながひめ)。縁結びの神とされていますが、私の知っている磐長姫はそんな能天気な姫ではない。妹の「コノハナサクヤ」と共に天孫族ニニギに嫁に出されるのですが、その醜女ゆえ返されてしまうのです。なぜ、そんな縁薄き姫が縁結びなのでしょうか。とても強引な気がします。
さらに100mほど登ると奥宮(おくのみや)。奥宮(おくのみや)に奉られたいる現在の祭神は、闇オカミ神(くらおかみのかみ)。クラオカミはタカオカミと同一神であり、あるいは対となる神だと言われています。1055年に奥宮よりタカオカミは奥宮から本宮に移されたそうですが、では今ここに祭られている神はやはりクラオカミなのでしょうか。クラオカミとは、タカオカミのダークサイドなのでしょうか。
奥宮には、船形石と呼ばれる、恐らく上からみたら船の形に見えるに違いない遺跡?があります。1600年程前、大阪湾に黄色の船に乗った神、玉依姫(たまよりひめ)が現れ、この船が行き着く処に棲む神を敬えば、国は栄え民は幸福となると宣言し、船を進めます。船は鴨川を上り、貴船川を上り、その源流にたどり着きます。それが奥宮です。その時の黄色い船に由来し、貴船と呼称されたとも言われています。御船形石の遺跡の中には、その時の貴船が隠されているそうです。

奥宮の地に潜んでいたもの
イワナガヒメとコノハナサクヤの父は、オオヤマツミです。タカオカミもオオヤマツミもイザナミ、イザナギの子だと言われています。イザナミ、イザナギの国生みの儀で生まれたクラオカミが、タカオカミであり、またxxxxヤマツミと呼ばれる八神がオオヤマツミのことだと言うのです。しかし、古事記も日本書紀も朝廷の側から書かれた書物であり、特に由来については疑ってかかる必要があることは常識です。オオヤマツミの意は、山を統べるもの。オオヤマツミは、当時の朝廷と同等の力を有する豪族ではないかと推測しています。イワナガヒメ、コノハナサクヤの婚姻とは政略結婚であり、朝廷との血縁関係の成立だったのでしょう。山を統べ、水源を牛耳っていたオオヤマツミの一族が奥宮の正体だったのでは。
ところで、山を統べる人達とは、具体的には鉄(たたら)を統べる「山の民」ことだとは、民族学の常識です。
貴船神社からの帰り道、貴船口でバスに乗り損ねた私たちは、二ノ瀬まで歩いて行きました。途中で、ちょっと不思議な灯籠と木箱を見つけます(写真)。後で調べてみると、これは木製の愛宕灯籠で、向かって右の木箱は火伏札を奉納する神具らしいことが判りました。愛宕神社は、火の神の神社。二ノ瀬あたりには、火を制御し、信仰する火の民の文化が根付いているのです。
Q. 京都(洛北地域)の愛宕灯籠の横には、必ずといって良いほど木箱があり、3本の榊が挿してありますが、愛宕灯籠と関係するものなのでしょうか?
A. 加茂社の御阿礼神事において遥拝所に3本の榊を挿すという記載があり火伏の神として「愛宕さん」への遥拝所的な役割があるのではないでしょうか。
(Yahoo 知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q127219437)

そして貴船は京都の北東に位置しています。丑寅(うしとら)の方角、そうです鬼門です。朝廷にとって当時の貴船は異人(鬼)の棲む土地だったのではないでしょうか。

貴(黄)船のたどった道
貴船の伝承とは何を意味しているのでしょうか。朝廷に従わぬ山の民とは異なる、もう一つの民「水の民」(海の民)を利用した山の民侵略か国替えではなかったかと疑っています。朝廷は異人を使い、異人を制圧する手を使ったのではないでしょうか。その民が、タカオカミだったのではないか。
かくして、貴船は水の民と山の民、異人神であるタカオカミ、オオヤマツミが封じられ、朝廷の神話大系にクラオカミ、ヤマツミ八神として組み込まれていきます。
貴船の地は呪いの地となりました。丑の刻参りが、この地から生まれたのも、決して偶然ではないでしょう。

なぜ磐長姫(いわながひめ)が祭られているのか
オオヤマツミの娘達、コノハナサクヤとイワナガヒメは対象的な女神です。コノハナサクヤは、超美人で有名で、イワナガヒメは、見目がとても残念な女神ですが、磐のごとく健康的で長命であり、イワナガヒメと結婚することは子々孫々長く繁栄することが保証されます。コノハナサクヤは、短命です。天孫族ニニギがコノハナサクヤを選んだことは、天孫族の栄華が続かないことの呪いです。
出戻りとなったイワナガヒメは、さぞや哀しく朝廷を恨んだことでしょう。その呪いを恐れた朝廷が呪いを封じるため、縁結びの神として奉ったのではないかと思います。貴船神社が、その豊かな水源から雨ごいの地として有名になった平安時代は、呪い合戦の時代でもありました。最強の鬼神菅原道真を封じる天満宮など同様の仕掛けが用意された時代でした。

貴船神社は美しい処でした。川床で食べた釜飯もビールも大変美味しく、本当に久しぶりに休日を、旅を満喫しました。
もっと写真の腕を上げて、今度は叡山電鉄に乗って鞍馬駅から散策してみたいものです。