2012年12月10日月曜日

豊田市美術館の一品

11月25日、豊田市美術館に行く。仕事の関係から豊田市とは縁もあり一度は訪問してみたかった。運良く豊田市の滞在と青木野枝「ふりそそぐものたち」展が重なり、思いきって足を伸ばしてみる。
名鉄豊田駅から約1km、七洲城趾に建築されている。名鉄豊田駅からの道のりは、特に並木道として整備されているわけでもなく、落ちぶれた感じの地方都市の風情。歩いていても全く気持ちよくない。美術館に向かう道で、こんなにワクワクしないのも久しぶり。小高い丘の上に美術館はあるのだが、その麓から美術館への道のりも、アスファルトの車道で、これまた味もそっけもない。それどころか少し危ないのではないかと思う。上り道の途中に小さな公園があり、良い感じのベンチがあるのが慰め。
美術館の入口は近代的オフィスな感じで、窓口もない。本当にこちらが表玄関なのだろうか。恐る恐る中に入ると、おっ、やっと美術館らしい静謐な感じがしてきた。心配したが、なんとか美術館に来たようだ。

ところで、豊田市美術館は、城跡側・庭側からみると、とても美しい建物なのだ。名のある建築家の作品ではないかと思う次第。建物の中はモダンアートしてます。

青木野枝 ふりそそぐものたち

名古屋市美術館との共同企画で、それぞれ別の作品が展示されている。青木野枝は、現代彫刻家で「鉄を媒介とした空間表現を特徴とする (Wikipedia)」そうだ。ワイヤ、鉄輪、鉄棒など様々な部品をジャングルジムやトンネル、かまくらのように組み上げ、空間を切り取り、閉じ込め、流れを作る。そこに大気が流れ、よどみ、雨が降り注ぎ、溜まる気配を表現していた。この手法は、一種の結界づくり、呪術、風水のようなものかも知れない。
展示点数は、10点程だろうか。一般の個展からすると少ないと思うが、個人的には、これぐらいの点数が嬉しい。これ以上だと疲れてしまう。
青木野枝と豊田市とはなにか関係があるのだろうか。青木野枝は東京出身だし、活動の中心も中部ではないようだが。
青木野枝の屋外作品が、佐久島に展示されているそうだ。暖かくなったら行ってみよう。

常設展
美術館の楽しみの一つは常設展だ。三部屋ほどが常設展示に当てられていた。二室は地元の工芸品作家の展示となっていたのは微笑ましい。柿を素材にした素朴な味わい。これはこれで良いのだが、もう少し美術としての革新性が欲しい。刺激がほしい。そのような作品は、豊田には生まれなかったのだろうか。
最後の一室は、著名な作家の買い漁りに見える。ジャコメティやマグリットなど好きな作家も1点づつ展示されており嬉しいのだが、こじんまりとした部屋に、日本画、海外作品、彫刻、年代もバラバラな作品が配置され解説もなし。常設展がこれでは、美術館のソフトウエア力が疑われる。所蔵品の量ではなく質や企画の問題だろう。
展示の中で、これは、と言う「お気に入り」を見つけた。
辻晋堂(つじしんどう)座像。石膏。
片膝をついて座る姿勢が、あられもなく恰好良い。重心を下にデフォルメした造形は、小さな胸よりも母性を深く感じる。現代彫刻の洗練さと土偶のような生命力とも兼ね備えた美しい作品だ。
これだけのために、また来ても良いかなと思い直す。

豊田市美術館は、結局バランスが悪いのではないだろうか。良いところがまだまだあるに違いないのだが、見つけきれない。庭も綺麗だし、お茶室もあるようなので、またゆっくりと尋ねてみたい。