2012年11月10日土曜日

W.S.Q

W.S.QはWorld Saxophone Quartet。4人のサックス奏者で構成されたジャズユニット。1980年ぐらいから活動しているらしい。リズムセクションがないため、ベースやドラムの代わりをソプラノ、アルト、テナー、バリトンサックスのいずれかがその役割を兼ねることが多い。フリージャズ スタイルのエモーショナルな演奏と奇妙なユニゾン、不協和音が時にヒステリックな緊張を、時に陶酔的なメロディーと盛り上がりを生み出し、そしてスイングが生まれる。私の大好きなジャズ・グループだ。
W.S.Qを知ったのは、大学生の頃、まだレコードが主流だった時代だ。当時、フュージョンと呼ばれる軽音楽なジャズが流行った。今は、フュージョンとは本当はどの様な音楽を示し、目指すものであったのかは分かっているつもりだが。渡辺貞夫はカリフォルニアシャワーをやり、スクエアがメイク・ミー・ア・スターで、デビューした頃、私はジャズを聴き始めた。カッコつけてジャズ喫茶に通うようになった。当時、福岡の天神にジャズ喫茶COMBOがあり、その暗い店で、まだ知識も足りずにリクエストもできないまま、鳴るがままのレコードに聞き耳を立てながら、一人で一時間ほど過ごしていた。暗いので本も読めない。時々 、鳴っているレコードが何かをカウンタ近くまで行って確かめるぐらいしか、動くことはなかったと思う。それとて、「何だ、こんなものも知らないのか」と思われないように、慎重に行動していた。つまり、突っ張っていたのだ。


そこでW.S.Qに出会う。サン・ダンス、その時の衝撃的な曲名。なぜ、そのようなフリージャズがかけられたのか、今でも不思議だ。COMBOは、当時のチャラい音楽はかけず、ビバップやハードバップが主流で、女人禁制のお硬いジャズ喫茶だ。フリージャズがかかったことなど一度もなかった。女性向きの小洒落たジャズ喫茶で「ジャレット」と言う名があったのを思い出した。もちろん、キース・ジャレットから取ったネーミングだろう。女性に縁がなかったので、一度もいかなかったが。話がそれた。サン・ダンスだ。私以外にも、数名ジャケットを確認しに席を立つ人がいた。出会いを感じると共に、自分に「見分ける力」が身についたことを実感した瞬間だった。

福岡天神のジャズ喫茶COMBOは、タモリもよく通った有名な店だったらしいが、数年前に閉店したそうだ。W.S.Qのアルバムは、iTunesで検索すると、13枚もある。どれも、1000-1500円と安い。1枚数千円するレコードを探し回った頃からすると、夢のような時代だ。3分の1ぐらいは既に持っているが、改めて買い直しても良いよな。

あの頃、音楽を聴くことは私にとっては儀式だった。一曲、一曲を部屋のリスニングボジションに座って、目を瞑って聴いていた。たくさんの情報を音楽から得ていた時代だった。W.S.QのiTunesコレクション・コンプリートを目指すにあたり、その姿勢を復活させたい。また真剣に音楽を聴いてみたい。音楽好きな人にとって、本当に良い時代が来たのだから。