2012年9月29日土曜日

Googleのコア・コンピタンス

一般には検索エンジンがGoogleのコア・コンピタンスだと言われています。
検索エンジンを軸に広告収入を得る。モバイルOSを只で普及させるのも、検索エンジンを特定し、結果広告収入を独占するため。ブラウザもそうだ。
だが、ちょっと関節技すぎないだろうか? 現実を説明するために「風が吹けば、桶屋が儲かる」みたいな説明を聞いているような気がします。
最近のGoogle関連で気になる記事が三つ。

眼鏡も自動車も広告収入からは程遠いように見えるし、また即効性のあるビジネスになるとも思えません。しかしビジネスモデルの視点を外してみると、Googleらしさが見えてきます。永遠のベータ版しか作成しないと皮肉られるgoogleの行動が、実はなにを生み出しているのでしょうか。

MAP、グラス、自走式自動車、これらは難しい技術です。具体的にどの辺りが難しいかと言うと、それは経験値が大量に必要だと言うことです。アプリケーションソフトウエアは、総じて目的が決まっており、利用のされ方は意外と固定されています。逆に言うと、目的あるいはユースケースを特定してから、アプリケーションソフトウエアを作成するのが、普通のシステム開発です。ところが、地図もグラスも自動車も、現在は利用方法や利用範囲がメチャメチャ広く、また日々増えていきます。それぞれの利用の組み合わせも考えるとシステムがカバーすべき範囲は恐ろしく膨大だと言えるでしょう。したがって、その完成には膨大な量の利用例が必要で、また整合性を保つ必要があります。
つまり、強大なユースケースのデータベースが必要です。作成には長期間の実験も必要で、それを蓄積し整理するノウハウも持っていなければなりません。googleの検索エンジンは、そのような長い間の実験の結果得たランキング技術が製品化され、広告収入となった例です。
現在進行中の眼鏡や自動車の実験の行き着く先は、広告収入ではないでしょう。恐らくGoogleも知らないのでは。ただ、ただ、膨大かつ有用なユースケースデータベースが出来ることこそ重要だと考えいるにちがいありません。このデータベースは、他社に対する大きなアドバンテージです。時間的に全く追いつけません。Appleが失敗したのも無理がないことです。Appleは勘違いしているのです。MAPは技術と地図情報を手に入れれば、すぐに実現できるのだと。不足しているのは、ユースケースデータベースです。これは暫く追いつけない。Googleのコア・コンピタンスは、ユースケースデータベースを作り上げる力です。この力は、大きく、長く、金を生み続けると言うことを検索エンジンビジネスから成功体験としてgoogleは身についているのでしょう。コア・コンピタンスと呼んで良いのでは。
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昨夜(2012/9/28)、Appleのティム・クックCEOがMAPアプリについて謝罪をしたのですが、そのなかで面白い発言があった。「たくさんの人がMAPアプリにアクセスしてくれた事に感謝しています。これでより良い製品に改善することができます」と言ったのだ。気づいたのだろうか。良いMAPアプリを作るには、ユースケースを大量に手に入れる必要があるということに。

画像はセントレア国際空港付近をApple Mapアプリで検索した結果です。フィリピン海に浮かぶセントレア島の入口には、謎の韓国名の橋がかかり、ダイセーエブリー24と言うアイドル団体か宗教団体の事務所があるようです :-p