2012年3月17日土曜日

Appleはプロモーションも再発明し始めた

2月のOSX Mountain Lionの発表からです。Appleの新商品プロモーションのやり方が大きく変化しています。一般広報への発表前に、一部のメディア、一部のブロガーに個別プレゼンを行なったのです。ポイントは

  1. 全てのメディアではない、"一部”だった。
  2. メディア以外にも何名かの有力コメンテータ(ブロガー)が選ばれた。
  3. ホテルの一室にお呼ばれされ、プレゼンテータ(Appleの有力者)複数名、お客一名。
  4. 発表当日まで情報公開を禁じられていた。


そして発表当日。彼らが一斉に詳細かつ好意的な記事を競って書いたのだ。このパターンは、"新しいiPad"でも行われたらしい。
アフター・ジョブズのAppleの大きな変化は、予想外なところから現れました。Appleの新戦略のキーは、コミュニケーション。コミュニケーション・コントロールの実現を目指しているのではないしょうか。

Appleが抱えているリスクの一つはユーザの反乱です。歴史的にAppleのユーザのロイヤリティは非常に高い。もちろん私もその一人です。世界一になった今でも、古くからのユーザのAppleに対する信頼、ロイヤリティは熱いと感じていますし、Appleも古いユーザが期待している新興企業らしさ、スノッブさも失っていません。Apple製品は、まだ個人の差別化のギミックとして重要なのです。しかし、ある時、体制側になってしまう可能性があります。Microsoftのように。アナキンがベイダー卿に変身するように。そうなると、ユーザは精神的に離反するかもしれません。ビジネス基盤と異なり、生活基盤の製品の離反は怖いものです。Sonyが証明しています。このような状況に陥らないように、そして生産から消費市場の全てをコントロールするために、その最後の仕上げであり、リスクマネジメントのために、今回のコミュニケーション戦略が採用されたのではないかと想像してみました。

王者なればこその、なんと巧妙な手段なのでしょう。マスコミで生活する人々にとって、他が持っていない情報は喉から手が出る程ほしいものです。それをソース元が提供してくれるのです。ユーザに影響力を持っていれば、個人にも提供されるのです。当然ですが、ガセを積極的に流したり、面白おかしくAppleを取り扱っていた人気ニュースサイトには、提供されませんでした。大手ニュースメディアも一部しか選ばれていないのです。差別され、特権を得た提供者は不用意に漏らすことはないでしょう。漏らしてしまえば、次回以降は絶対なしですから。ユーザは誰が本当のことを知っているかを知っているので、結果他のニュースソースは、信じないでしょう。他のニュースソースは、憶測を流せば流すほど、Appleから嫌われ、ユーザから離反されることになります。次回、Appleからプライベートショーへの招待状を受け取るためには、真面目に記事に取り組まなくてはならないのです。暴露合戦はなくなり、ユーザは正しく新しい商品に期待を膨らませることができるようになります。(とAppleは考えているでしょう。 政治に利用したらヒットラーですね。)

この戦略は、Appleが過去に始めたエバンジェリスト作戦の発展版と位置づけることもできますが、全く新しいプロモーション手法であると思います。マーケティングにおいても、Appleは革新的な企業であることが証明され、新しいAppleの可能性が見えてきました。

日本企業は、このような手段を絶対にとらないし、思いつきもしないでしょう。横並び、公平、予定調和は日本の伝統ですからね。それに、新メディア製品を旧メディアで宣伝している日本(SNSの宣伝をTVで行っている)ですから。